+++ くたばれガチャピン +++

Last update:09/03/14



+18

 夜中に本を読んでいる時、腹が減ったので飯を炊いた。暫く後、ピーッと炊き上がりを示す音。 面倒なので茶碗によそわず、炊飯器に入ったままの状態で飯を食う。また暫く後、 炊きたての銀世界のなかに赤い点がぽつりと浮かんでいるのに気づく。どうやら鼻血を出していたらしい。 もう止まってはいるものの念のためにティッシュを詰める。して、この飯をどうするか。一瞬思案し、 まあどうということも ないだろうと箸でつまみ、口に運ぶ。なんともいえぬ心持になる。



+17

 新たに一人暮らしを始める人達にひとつ教えておくべきことがある。最初のころは、 目覚まし時計は必ず通学時間、出勤時間ぎりぎりにセットしておくべきだ。時間に余裕を持ってセットしてしまうと、 日によってはついつい「もう少し寝ていようかな」という気になって二度寝してしまう。これがよくない。いずれは二度寝が習慣に なってしまい、目覚まし時計が鳴っても起きられなくなってしまうのだ。目覚まし時計が鳴ると起きる、というのは 一種の条件反射であるから、アラームの音を大きくしようが回数を増やそうが無駄である。人間というのは慣れれば隣町で 核戦争が起こっていても寝ていられるものだ。肝心なのは、二度寝するという条件反射を身につけないよう心がけるということである。始末書を七回も書いている俺が言うのだから間違いない。



+16

 何もせずとも、ボタンを押せばご馳走が一瞬で出てくる機械。
 反対する意見もあろう。「母の手料理を食いたい」と。しかし結局はみんながその機械を使う。 料理を作る手間と同様、そういった手作りの愛情もまた、 噛み締めるのには多少のめんどうくささが伴うからだ。



+15

 交換や掃除をあまりしないので灰皿にどんどん吸殻が溜まっていく。気がつけば所狭しとフィルターが林立している状態だ。 その状態をじっと見ていると、フィルターのヤニで黄色くなった部分が目玉のように見えてくる。無数にあらぬ点を見つめる 黄色い目玉。なんとも不気味である。灰皿はこまめに取り替えた方がよい。



+14

 世の中を「つまらない」と思っているのはあなたがつまらない人間だから、らしい。
 つまりはつまらない人間はつまらなくはないということにならないか。なぜならそれは叱咤の言葉であるはずだからだ。そうではないならば、 「つまらない」と思っている人間はつまらない人間だと判断する人間もその段階でつまらない人間なのだから。
つまらない奴につまらないと言われる、これほどつまらないことがあろうか。つまりはこの言葉は自戒以外に使うべきではない、ということだ。なんだ、つまらん。



+13

 最近のゲームというのは実にリアルである。ということをFF13のデモムービーを見ているうちに思った。 今はまだ大丈夫であるが、そのうち本当に現実と区別のつかないCG映像が出てくるに違いない。
 殺人事件のニュースにて、「いやー、最近の子どもは現実とゲームの区別がつきませんからねえ」とのたまうCGで表現されたコメンテーター。嗚呼おそろしい。



+12

 友人、といえるほど仲良くはない知人が言っていた。「考えることは孤独だ」と。
 確かにそうかもしれない。人はみな思い煩うことは違っていて、各人がそれにかかりきりになっている。 母性を持って迎えてくれる理解者などありはしない。同じ時代に生きていながら、それぞれ 別の問題を携えながら任意の一点へと向かって漂い続けていくだけなのだろう。それでも。それでも!  声を荒げたくなってしまう。だけれど、言いたい言葉が見つからない。結局、僕はまだ若いのだ。



+11

 休日、アパートの自室で一人インディアンポーカーをしているところに宇宙人がやってきた。
 緑色をしたその皮膚はなにやらぬらぬらとてかっている。顔はどことなく俳優のえなりかずきに似ていた。 宇宙人は話しかけてきた。
 「貴様、この星の人間か」
 そうだ、と答えた。未確認生命体にありがちな、カタカナっぽい発音ではないのでやや興をそがれたが、 日本語で話しかけてきたところには感心した。おそらくこちらの心象を読み取って会話する装置なり技術なりなんなりが あるのだろう。
 「その通りだ」
 肯定すると同時に宇宙人は少々驚いた様子だった。なぜこんな未発達な文明しか持たない星の生命がそのような 知識を持っているのかと疑問を口にした。俺は人並よりは多い程度にSFをかじっていたので、かいつまんで その知識を教えてやった。宇宙人は俺が語る恒星間移動の原理や脳における心象情報のデジタル化とそれに伴う処理機構の原理などを 興味深げに聞いていた。
 「なるほど、そういう考え方もあるのか」
 そんなことを宇宙人がいった。技術として実現しておいて何を言うか。俺は思ったがどうやら宇宙人にもいろいろ考えるところがあるらしい。 他にはないのかとせがまれたのでインディアンポーカーをしながらダイソン球であるとか光学迷彩であるとかの話をした。宇宙人はインディアンポーカーが 弱かった。心を読めるくせにとも思ったが、どうやら宇宙人にもいろいろ考えるところがあるらしい。気をよくした宇宙人はお礼に自分達の科学やら文明やらの 話をしてくれた。専門的な知識を持たない俺にはほとんどチンプンカンプンであった。その後別れのあいさつとして教えてやった 、手を振る動作をしながら「ばいばい」と言う、を流暢に行い、帰りがけに陸地の5分の4を焼け野原にするという本来の目的を終えて宇宙人は彼方へと去った。



+10

 つまらないことをねちねちくちゃくちゃと考え、形にならずに脳漿と混ざり消えていく。 後に残るは虚脱感。うへぇ。口に出る。うへぇ。世の中は3つのことで出来ている。興味が あること。さほど興味はないが漫然と眺めていられること。興味がないこと。僕には1:6:3ぐらいの割合でこういう 風になっている。暇が潰しやすいということは害悪である。時間だけが無駄に過ぎていく。もう人生も半ばである。



+9

 暗い自分というのは嫌いではない。人間、明るくなった分だけ冷やす時間が必要なのだ。 でなければいつかは燃え尽きてしまう。燃え尽きずに発光し続けている奴というのは簡単な話、気が狂っているのだ。というわけで 自分でなくともみな人前では余計な心配な気遣いをさせぬ様いつも明るく振舞い、人の見えないところでは ちゃんと暗くなっているのだと確信しているし、口にこそ出さねど他の人達も同様の確信を得ているのだろう。なるほど、みんな気が狂っている。



+8

 コンビニに入るとき、後から入って人がいたので そのまま手で扉を支えているとき、アパートの隣人とすれ違い様に挨拶をするとき、心の一部分がなにやら嫌な持ちようになる。
「ハハハ、コノギゼンシャメ」
 なんだかいい人を演じているような気分になってしまい億劫になる。心から良いことをしたという気分にならない。 「やらぬ善よりやる偽善」とはよくいったものだが、偽善はやはり偽善なのだろう。妙なもやもやは消えない。
 「こういう場合はこうした方がいい」というセオリーがあり、それに沿って行動をするから偽善的な気持ちが生まれるのだろう。 無垢な少女が素直にかわいらしいのはおそらくこうした理由からだ。キャバクラのおねえちゃんにいいことをされても 何か裏があると思ってしまう。念のため言っておくが「いいこと」というのは別にいやらしい意味ではない。 「子ども」ではなく「少女」であるのは単に僕の趣味だが。
 ふと、アダムが知恵の果実を食べたため、人間の心に罪が生まれたという聖書の一節を思い出した。 読んだことはないが、聖書というのは実はとても面白い本なのかもしれない。



+7

 晩酌のあてにイカの刺身を食おうとしたとき、俺は度肝を抜かれた。 イカの思念が俺の脳に流れてきたのである。
 (貴様、俺を食うのか)
 イカは怒っていた。その怒りは奥に潜むうろたえと恐れを隠そうと掻きたてられたもののようにも感じる。
 (もちろんだ)
俺は被食者である彼に対し毅然と思った。ここで気後れしてはならない。それが 食す側としての礼儀であるとも思えたからだ。
 こちらの思念もどうやらイカには伝わるらしい。イカは答えた。
 (どうしてもか)
 ふと、俺はばかばかしく思った。このイカは刺身になっている時点で既に死んでいるのだ。 死んでなお、食われることを恐れるとは、なんとも浅ましいイカだろう。
 箸を手にとり、刺身醤油につけ、口元に運んだ。 噛むたびに(うむ)(うむ)とイカの思念は唸り、やがて小さくなり消えた。俺は飲み込んだ。
 それがイカの思念だったのか、俺の気が違っていたのかはわからない。



+6

 音速ラインが良い。声がいい。やさしい感じがする。歌詞は全然覚えていない。
声がいい。それだけでよい。



+5

 真っ白な部屋のまんなか、顔に蒼白を湛えながら、妻はおずおずと話し始めた。
 「良美、あなたは私たちの本当の娘じゃないのよ」
 ごくり、と良美は息をのんだ。その様子をみて、私は言葉をどう挟むかを迷う。
 「いままで黙っていてごめんなさい。でもあなたも明日で中学生でしょう。 子どもじゃない。そろそろ本当のことを知ってもいい頃だわ」
 そういって、妻は上を見上げた。その頬には私の知らない皺が新たに三つ四つ、刻まれていた。 良美はうつむいたままだった。この場を逃げ出したそうに腿のうえに拳を作り、にらんでいた。
 「おい」
 辛そうな良美を見て、たまらず私は妻に声をかけた。
 「なに、あなた」
威嚇するような眼光を妻は私に向けた。もう言ってしまったのだわ、そう 訴えるような目だった。
 負けてたまるか。意気込み、わたしは言った。
 「この子は、どこの誰だ」
 これを機とばかりに良美は椅子を飛び降り、逃げた。妻は呆けた顔をして私の顔を見た。 その妻越しに、真っ白な時計が見えた。そろそろ主治医が定期健診に来る時間だ。



+4

 気付いたが、近ごろは極めて「素」でいる時間が長い。素というのは恐ろしい。無感情である。 時折「仮に5分後に死ぬと分かったとしても、その事実に何も感じないのではないだろうか」という感覚に襲われる。 実際に銃口を突きつけられたりすればもちろん違うのだろうが、そういうきっかけでもないかぎりおそらくは「無」である。 リアルを感じる心が希薄である。だるい、何もやる気が起こらない。そして嗚呼、悲壮感すらないというのが恐ろしい。 恐ろしいというのもおそらくは「こういう精神状態はよくない」という知識から出た言葉だろう。ああ、おそろしい(棒読み)。



+3

 特に話題もないのに会合に参加してみる。特に話題があるわけでもないので、ちぐはぐでその場的なやりとりに なる。発言が散発的になり、空白を埋めきれなくなり、理由をつけて退散する。実に空虚だ。それでも参加してしまうのは 、空虚さにある種の中毒性というものがあるのだろう。



+2

 腹が減る。冷蔵庫を漁ったがあるのはパックの牛乳が一本。飽きれた。この液体でどう腹を満たせというのか。 しかたがない、今日も喫煙によるニコチンの作用で誤魔化すことにする。こういった生活をここしばらく続けている。 めんどくさい。気力が湧かない。よく死なないもんだ。死なないくせに減るな俺の腹。実に腹立たしい。



+1

 サイト開設。極めてだらだらやります。
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